今回は、福井市の南部にあるおさごえ民家園を紹介します。「おさごえ民家園」の「おさごえ」って何?って思った方。「おさごえ」は、この民家園のある地名のことです。福井市は東西に流れる足羽川によって南北に分断されていますが、南側には足羽三山と呼ばれる低山が足羽川のすぐそばから連なっています。足羽三山はその名の通り三つの山塊の連なりで、足羽山・八幡山・兎越山の三山から構成されています。兎越は「おさごえ」と読み、その地にある民家園は「おさごえ民家園」なのです。
風土に根差した住まいのかたち
兎越山につくられた「おさごえ民家園」。ここには、福井県の各地から江戸時代に作られた古民家が移築されています。いずれの建物も古い様式を残した興味深い建物ばかりです。どの建物も素晴らしいのは、有力な農民が居住した建物であるからですね。そこは注意しておく必要があります。とはいえ、いずれの建物も福井県内各地の気候風土にあった造りとなっているのが面白いところです。福井県は豪雪地帯でもありますが、降雪がそれほどでもない旧若狭地方の建物は軒が低く、茅葺屋根の傾斜も緩やかです。屋根の傾斜が緩やかであれば二階あるいは屋根裏の空間が多く取れ、居住性は向上するでしょう。しかし、豪雪地帯である奥越地域の建物は軒が高く、屋根の傾斜は急です。軒が高いのは積雪時の出入りを考慮してのことでしょうか、また屋根の傾斜が急なのは、雪が積もりにくくするためですね。
古民家といえば、世界遺産白川郷の合掌造を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。白川郷は飛騨地方にあり、福井県嶺北地方とは隣接しています。多少形は違うものの、積雪時の冬の厳しい暮らしに備えた民家のかたちの在り方として興味深いものがあります。
また、おさごえ民家園には外便所も移築されています。今から20年以上前ですが、京都府北部地方の民家で現役の外便所を見る機会がありました。人糞を重要な肥料とする生活システムの装置の一部であると考えると興味深いものがあります。
映画「おしょりん」のロケ地
2023年11月には福井県を舞台とした映画「おしょりん」が公開されます。福井県は眼鏡枠の生産地として有名ですが、その始まりの物語です。明治の眼鏡生産黎明期の主人公らの家として「おさごえ民家園」がロケ地として使用されています。おさごえ民家園で、映画のストーリーに思いを馳せるというのもいいかもしれませんね。
基本データ
所在地:福井県福井市月見5-4-48
営業時間:9:00~17:15
定休日:毎週月曜日
料金:大人100円
駐車場:9台